呉市広名田一丁目の落語家林家すい平(本名木村亮)さん(35)が九月下旬、呉市出身者で初の真打ちに昇進する。「真打ちになれば一人前」と言われる落語界。昇進を前に、故郷への恩返しの気持ちを込めて出前落語を重ね、笑いの種をまいている。
呉市になった野呂山は、「三原市」と合併したかった。「見晴らし」がいいから。お盆に呉(暮れ)の話―。すい平さんの軽妙な語り口に、客席は笑いの渦に巻き込まれた。
十二日夜、呉市広本町一丁目の末広自治会館であった落語会。知人らを前にして得意の小噺(こばなし)や古典落語「みそ豆」を、上半身を大きく使って表情豊かに披露した。
六月下旬から広地区の自治会館を回り、落語会を重ねている。すい平さんは「故郷のファンに支えられてきた。呉に落語が根付くきっかけになれば」と願う。
すい平さんは呉港高を卒業後、上京。上野の鈴本演芸場裏のバイト先に通ううち落語に興味を持ち、一九九二年春に師匠の林家こん平さんに弟子入り。芸名は呉のイメージから、「かもめの水兵さん」にちなんで名付けられた。
すい平さんは「人前で演じ、笑ってもらうのが快感で、とりこになった」と落語の魅力を話す。呉弁のアクセントに悩みながら精進を重ね、十三年がかりで真打ちに昇進。九月二十一日から鈴本演芸場や新宿の末広亭など東京都内四カ所での昇進襲名披露興行に臨む。
落語協会(三遊亭円歌会長)の真打ちは、現在百六十八人。真打ちになると、周りからは「師匠」と呼ばれ、弟子を取れる。寄席のトリも任されるようになる。
ただ、落語界は厳しく、真打ちになっても、芸の力と人気がなければ高座に上がる機会は減る。すい平さんは「とにかくオリジナルにこだわりたい。もっと芸を磨き、代わりのいない芸人になりたい」と意気込んでいる。
【写真説明】真打ち昇進を前に、地元の落語会で熱演する林家すい平さん(末広自治会館) |